大祓詞

おおはらえのことば

18

神々の議りと天降り

高天原たかまのはらに神留かむづまり坐ますす皇親神漏岐神漏美めらがむつかむろぎかむろみの命以みこともちて

八百万神等やほよろづのかみたちを神集かむつどへに集つどへ賜たまひ神議かむはかりに議はかり賜たまひて

我あが皇御孫命すめみまのみことは豊葦原水穂国とよあしはらのみづほのくにを安国やすくにと平たいらけく知食しろしめせと事依ことよさし奉まつりき

此かく依よさし奉まつりし国中くぬちに荒振あらぶる神等かみたちをば神問かむとはしに問とはし賜たまひ神掃かむはらひに掃はらひ賜たまひて

語問こととひし磐根樹根立草いはねきねたちくさの片葉かきはをも語止ことやめて天あめの磐座放いはくらはなち

天あめの八重雲やへぐもを伊頭いづの千別ちわきに千別ちわきて天降あまくだし依よさし奉まつりき

此かく依よさし奉まつりし四方よもの国中くになかと大倭日高見国おおやまとひだかみのくにを安国やすくにと定さだめ奉まつりて

下したつ磐根いはねに宮柱太敷みやばしらふとしき立たて高天原たかまのはらに千木高知ちぎたかしりて

皇御孫命すめみまのみことの瑞みづの御殿仕みあらかつかへ奉まつりて天あめの御蔭日みかげひの御蔭みかげと隠かくり坐まして

安国やすくにと平たいらけく知食しろしめさむ国中くぬちに成なり出いでむ天あめの益人等ますひとらが過あやまち犯おかしけむ種々くさぐさの罪事つみごとは

天あまつ罪国つみくにつ罪許許太久つみここだくの罪出つみいでむ

此かく出いでば天あまつ宮事以みやごともちて天あまつ金木かなぎを本打もとうち切きり末打すゑうち断たちて

千座ちくらの置座おきくらに置おき足たらはして天あまつ菅麻すがそを本刈もとかり断たち末刈すゑかり切きりて

八針やはりに取とり辟さきて天あまつ祝詞のりとの太祝詞事ふとのりとごとを宣のれ

此かく宣のらば天あまつ神かみは天あめの磐門いはとを押おし披ひらきて

天あめの八重雲やへぐもを伊頭いづの千別ちわきに千別ちわきて聞きこし食めさむ

国くにつ神かみは高山たかやまの末短山すゑひきやまの末すゑに上のぼり坐まして

高山たかやまの伊褒里短山いほりひきやまの伊褒里いほりを掻かき別わけて聞きこし食めさむ

此かく聞きこし食めしてば罪つみと云いふ罪つみは在あらじと

科戸しなどの風かぜの天あめの八重雲やへぐもを吹ふき放はなつ事ことの如ごとく

朝あしたの御霧みぎり夕ゆふべの御霧みぎりを朝風あさかぜ夕風ゆふかぜの吹ふき払はらふ事ことの如ごとく

大津辺おほつべに居をる大船おほふねを舳解へとき放はなち艫解ともとき放はなちて大海原おほうなばらに押おし放はなつ事ことの如ごとく

彼方をちかたの繁木しげきが本もとを焼鎌やきがまの敏鎌以とがまもちて打うち掃はらふ事ことの如ごとく

遺のこる罪つみは在あらじと祓はらへ給たまひ清きよめ給たまふ事ことを

高山たかやまの末短山すゑひきやまの末すゑより佐久那太理さくなだりに落おち多岐たぎつ速川はやかはの瀬せに坐ます

瀬織津比売せおりつひめと云いふ神大海原かみおほうなばらに持もち出いでなむ

此かく持もち出いで往いなば荒潮あらしほの潮しほの八百道やほぢの八潮道やしほぢの潮しほの八百会やほあひに坐ます

速開都比売はやあきつひめと云いふ神持かみもち加加呑かかのみてむ

此かく加加呑かかのみてば気吹戸いぶきどに坐ます気吹戸主いぶきどぬしと云いふ神かみ

根国底国ねのくにそこのくに気吹にいぶき放はなちてむ

此かく気吹いぶき放はなちてば根国底国ねのくにそこのくに坐にます

速佐須良比売はやさすらひめと云いふ神持かみもち佐須良さすらひ失うしなひてむ

此かく佐須良さすらひ失うしなひてば罪つみと云いふ罪つみは在あらじと

祓はらへ給たまひ清きよめ給たまふ事ことを天あまつ神国かみくにつ神八百万神等共かみやほよろづのかみたちともに

聞きこし食めせと白まをす

現代語訳神々の議りと天降り

高天原たかまのはらの神々かみがみは八百万やおよろずの神々かみがみを集めあつめ、相談そうだんを尽くしつくしたうえで、皇御孫命すめみまのみことに豊葦原とよあしはらの水穂国みずほのくにを穏やかおだやかに治めるおさめるよう委ねゆだねました。国くにを乱すみだす神々かみがみを問いただしといただして鎮めしずめ、岩いわや木きや草くさまでも静まるしずまると、幾重いくえの雲くもをかき分けかきわけ、皇御孫命すめみまのみことを地上ちじょうへ降しくだしました。

注記

「皇親神漏岐・神漏美」などの語義や神格の特定には複数の解釈があります。本ページでは一説だけに断定しません。

冒頭

神々の議りと天降り1 / 8

大祓詞

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大祓詞

大祓詞について

概要

国に生じた罪を神々が受け取り、遠くへ運び、ついには消し去るまでを壮大な比喩で語る祓いの祝詞です。

構成
8節
本文量
804字
注記
3件

この祝詞で願うこと

  • 罪・穢れを祓い、清らかな状態へ戻ること
  • 共同体と国土の平安を願うこと

神々・対象

瀬織津比売
罪や穢れを川から大海原へ運び出す神
速開都比売
大海原へ運ばれたものを呑み込む神
気吹戸主
呑み込まれたものを根の国・底の国へ吹き放つ神
速佐須良比売
運ばれた罪や穢れをさすらわせ、失わせる神

由来と位置づけ

古代の大祓の儀礼に連なる詞で、現在広く知られる本文にも『延喜式』所収の大祓詞の構成が受け継がれています。神々の議りから祓戸四神による罪の消滅までを一続きに述べます。

本文の流れ

全8節で、「神々の議りと天降り」から「速佐須良比売と結び」までをたどります。

読む前に知っておきたいこと

  • 前半は罪が生じ、祓いの儀礼が行われるまで、後半は罪が消えていく過程を述べています。

  • 風・霧・船・鎌の比喩は、罪が跡を残さず取り除かれる様子を段階的に表します。

  • 「太祝詞事」や「伊褒里」など、古くから複数の解釈がある語を含みます。

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