六月晦大祓祝詞

みなづきのつごもりのおほはらへののりと

111

参集者と大祓の目的

集侍はれるうごなはれる親王みこたち・諸王おほきみたち・諸臣まへつぎみたち・百官ももの人等つかさびとたち、諸もろもろ聞しきこし食せめせと宣るのる

天皇すめらが朝廷みかどに仕へつかへ奉るまつる比礼ひれ掛くるかくる伴男とものを・手繦たすき掛くるかくる伴男とものを・靱ゆき負ふおふ伴男とものを・剣たち佩くはく伴男とものを

伴男とものをの八十伴男やそとものをを始めてはじめて官官つかさづかさに仕へつかへ奉るまつる人等ひとどもの過ちあやまち犯しけむをかしけむ種種くさぐさの罪つみを

今年ことしの六月みなづきの晦つごもりの大祓おほはらへに祓はらへ給たまひ清きよめ給たまふ事ことを諸聞もろもろきこし食めせと宣のる

高天原たかまのはらに神留かむづまり坐ます皇親神漏伎すめらがむつかむろぎ・神漏美かむろみの命みことを以もちて

八百万神等やほよろづのかみたちを神集かむつどへに集つどへ賜たまひ神議かむはかりに議はかり賜たまひて

我わが皇御孫命すめみまのみことは豊葦原とよあしはらの水穂国みづほのくにを安国やすくにと平たいらけく知しろし食めせと事依ことよさし奉まつりき

此かく依よさし奉まつりし国中くぬちに荒振あらぶる神等かみたちをば神問かむとはしに問とはし賜たまひ神掃かむはらひに掃はらひ賜たまひて

語問こととひし磐根いはね・樹根立こだち・草くさの垣葉かきはをも語止ことやめて

天あめの磐座放いはくらはなち天あめの八重雲やへぐもを伊頭いづの千別ちわきに千別ちわきて天降あまくだし依よさし奉まつりき

此くかく依さしよさし奉りしまつりし四方よもの国中くぬちと大倭日高見国おほやまとひたかみのくにを安国やすくにと定めさだめ奉りてまつりて

下したつ磐根いはねに宮柱みやばしら太敷きふとしき立てたて高天原たかまのはらに千木ちぎ高知りてたかしりて

皇御孫命すめみまのみことの瑞みづの御殿みあらか仕へつかへ奉りてまつりて天あめの御蔭みかげ・日ひの御蔭みかげと隠りかくり坐してまして

安国やすくにと平たいらけく知しろし食めさむ国中くぬちに成なり出いでむ天あめの益人等ますひとらが

過あやまち犯をかしけむ種種くさぐさの罪事つみごとは

天あまつ罪つみと畦放あはなち・溝埋みぞうめ・樋放ひはなち・頻蒔しきまき・串刺くしさし・生剥いけはぎ・逆剥さかはぎ・屎戸くそへ

許許太久ここだくの罪つみを天あまつ罪つみと法のり別わけて

国くにつ罪つみと生膚断いきはだたち・死膚断しにはだたち・白人しらひと・胡久美こくみ

己おのが母犯ははをかせる罪つみ・己おのが子犯こをかせる罪つみ・母ははと子こと犯をかせる罪つみ・子こと母ははと犯をかせる罪つみ・畜犯けものをかせる罪つみ

這はふ虫むしの災わざはひ・高たかつ神かみの災わざはひ・高たかつ鳥とりの災わざはひ・畜仆けものたふし・蠱物まじものせる罪つみ

許許太久ここだくの罪つみ出でむいでむ

此くかく出でばいでば天あまつ宮事みやごと以もちて大中臣おほなかとみ

天あまつ金木かなぎを本もと打ちうち切りきり末すゑ打ちうち断ちてたちて千座ちくらの置座おきくらに置きおき足らはしてたらはして

天あまつ菅麻すがそを本もと刈りかり断ちたち末すゑ刈りかり切りてきりて八針やはりに取りとり辟きてさきて

天あまつ祝詞のりとの太祝詞事ふとのりとごとを宣のれ

此かく宣のらば天あまつ神かみは天あめの磐門いはとを押おし披ひらきて

天あめの八重雲やへぐもを伊頭いづの千別ちわきに千別ちわきて聞きこし食めさむ

国くにつ神かみは高山たかやまの末すゑ・短山ひきやまの末すゑに上のぼり坐まして

高山たかやまの伊褒理いほり・短山ひきやまの伊褒理いほりを掻かき別わけて聞きこし食めさむ

此かく聞きこし食めしてば皇御孫すめみまの命みことの朝廷みかどを始はじめて天あめの下四方国したよものくにには

罪つみと言いふ罪つみは在あらじと科戸しなどの風かぜの天あめの八重雲やへぐもを吹ふき放はなつ事ことの如ごとく

朝あしたの御霧みぎり・夕ゆふべの御霧みぎりを朝風あさかぜ・夕風ゆふかぜの吹ふき払はらふ事ことの如ごとく

大津辺おほつべに居をる大船おほふねを舳解へとき放はなち・艫解ともとき放はなちて大海原おほうなばらに押おし放はなつ事ことの如ごとく

彼方をちかたの繁木しげきが本もとを焼鎌やきがまの敏鎌とがま以もちて打ちうち払ふはらふ事ことの如くごとく

遺のこる罪つみは在あらじと祓はらへ給たまひ清きよめ給たまふ事ことを

高山たかやまの末すゑ・短山ひきやまの末すゑより佐久那太理さくなだりに落おち多岐たぎつ速川はやかはの瀬せに坐ます

瀬織津比売せおりつひめと言ふいふ神かみ大海原おほうなばらに持ちもち出でなむいでなむ

此かく持もち出いで往いなば荒潮あらしほの潮しほの八百道やほぢの八潮道やしほぢの潮しほの八百会やほあひに坐ます

速開都比売はやあきつひめと言ふいふ神かみ持ちもち加加呑みてむかかのみてむ

此くかく加加呑みてばかかのみてば気吹戸いぶきどに坐すます気吹戸主いぶきどぬしと言ふいふ神かみ

根国ねのくに・底国そこのくにに気吹きいぶき放ちてむはなちてむ

此くかく気吹きいぶき放ちてばはなちてば根国ねのくに・底国そこのくにに坐すます速佐須良比売はやさすらひめと言ふいふ神かみ

持もちさすらひ失うしなひてむ

此かく失うしなひてば天皇すめらが朝廷みかどに仕つかへ奉まつる官官つかさづかさの人等ひとどもを始はじめて

天あめの下四方したよもには今日けふより始はじめて罪つみと言いふ罪つみは在あらじと

高天原たかまのはらに耳振みみふり立たてて聞きく物ものと馬牽うまひき立たて

今年ことしの六月みなづきの晦つごもりの日ひの夕日ゆふひの降くだちの大祓おほはらへに

祓はらへ給たまひ清きよめ給たまふ事ことを諸聞もろもろきこし食めせと宣のる

四国よくにの卜部等うらべども、大川道おほかはぢに持もち退まかり出いでて祓はらへ却やれと宣のる

現代語訳参集者と大祓の目的

意訳を含みます

参集さんしゅうした皇族こうぞく・臣下しんか・百官ひゃっかんへ、よく聞くきくよう告げますつげます。宮廷きゅうていに仕えるつかえる多くおおくの人々ひとびとが犯したおかしたさまざまな過ちあやまちと罪つみを、今年六月ことしろくがつの末日まつじつの大祓おおはらえで祓いはらい清めるきよめることを宣べますのべます。

注記

原文は十二月には月名を読み替えて同じ詞を用いるよう指示しています。

冒頭

参集者と大祓の目的1 / 11

六月晦大祓祝詞

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六月晦大祓祝詞

六月晦大祓祝詞について

概要

六月晦の大祓で宮中の人々の罪を祓い、罪が四柱の神々によって遠くへ運ばれ、失われるまでを述べる古代の祝詞です。

構成
11節
本文量
1170字
注記
3件

この祝詞で願うこと

  • 宮中の人々の罪を祓うこと
  • 罪が残らず失われるよう願うこと
  • 大祓の儀礼と卜部への引き渡しを宣告すること

神々・対象

瀬織津比売
罪を大海原へ運び出す神
速開都比売
運ばれた罪を呑み込む神
気吹戸主
罪を根の国・底の国へ吹き放つ神
速佐須良比売
罪をさすらわせ、失わせる神

由来と位置づけ

『延喜式』巻八に伝わる六月晦の大祓詞です。十二月には月名を読み替えて用いる注記があり、現代に広く奏上される大祓詞の古い構成を伝えます。

本文の流れ

全11節で、「参集者と大祓の目的」から「大祓の結びと卜部」までをたどります。

読む前に知っておきたいこと

  • 十一節で、参集者への宣告から罪の列挙、祓い、四神の働き、卜部への結びまで進みます。

  • 天つ罪・国つ罪の各罪名を、現代の法的・倫理的分類と同一視しません。

  • 現行の大祓詞と比較すると、歴史的な儀礼の結びまで含む構造が見えます。

六月晦大祓祝詞

目次

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