船玉大神の御稜威
掛けまくも畏き船玉大神の宇豆の広前に、畏み畏みも白さく
大神は霊異に奇しき御稜威坐して、顕見蒼生の幸を守り給ひ助け給ふ神になも坐しける
道・橋・船の導き
山行かば山路を開き給ひ、陸行かば陸道を導き給ひ
河川には橋を渡して行き渡る事を教へ給ひ
橋も及ばぬ大海原には船を造りて、千里の浦に行き通ふ事を教へ給ふ
道と海で仰ぐ神
故に山口には手向の神と崇め祭り、阡陌には道祖神と斎ひ奉り
海上にては船玉の神と仰ぎ祭る
海上の平穏を願う
甚も畏き底意知れぬ海原を自由自在に往来るは、大御神の恩頼にこそと
今大広前に珍の御酒・雑々の物を捧げ、称辞竟へ奉る
此の状を聞し食し、相うづなひ給ひて、風波の災なく、心の儘に平らかに安らかに通行らしめ
恵み幸へ給へと、畏み畏みも白す
現代語訳船玉大神の御稜威
意訳を含みます
畏れ多い船玉大神の尊い御前に、謹んで申し上げます。大神は霊妙で不思議な御威徳を備え、この世に生きる人々の幸いを守り、助ける神であると称えます。
注記
「霊異しく奇しき」は、底本の読みと文脈に沿って霊妙で不思議な働きとまとめました。「顕見蒼生」は現世に生きる人々の意に限定して訳しています。
意訳を含みます
山を行くときには山路を開き、陸を行くときには陸路を導き、川には橋を渡して向こう岸へ行くことを教えたと述べます。そして橋の届かない大海原には船を造り、遠い浦々へ行き通うことを教えたと称えます。
注記
山路・陸道・橋・船を、人の移動を可能にする一続きの導きとして訳しました。特定の技術の歴史的発明者を示す記述とは扱いません。
意訳を含みます
そのため、山の入口では手向の神として崇め、道の交わる所では道祖神として祀り、海上では船玉の神として仰ぎ祀るのだと述べます。
注記
この祝詞が一柱を道程ごとの呼び名で称える構成を示した訳です。手向の神・道祖神・船玉神を、あらゆる伝承で同一神とする説明ではありません。
意訳を含みます
底知れない海原を思うままに往来できるのは大神の御恵みによるとして、御前に神聖な御酒とさまざまな品々を供え、称えの言葉を申し上げます。この願いをお聞き受けになり、風や波による災いがなく、思うように平穏に行き来できるよう恵み、幸わせてくださいと申し上げます。
注記
「相うづなひ」は、願いを聞いて承知する文脈で限定的に訳しました。航海の安全を保証するものではなく、実際の運航では気象・航路・装備などの安全確認が必要です。
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