出雲国造神賀詞

いづものくにのみやつこのかむよごと

15

出雲の神々の奉斎

八十日日やそかびは在あれども、今日けふの生日いくひの足日たるひに、出雲国いづものくにの国造某くにのみやつこなにがし、恐かしこみ恐かしこみも申まをし賜たまはく

挂けまくもかけまくも恐きかしこき明御神あきつみかみと大八嶋国おほやしまぐに知し食すしろしめす天皇命すめらみことの大御世おほみよを手長たながの大御世おほみよと斎ふいはふとして

出雲いづもの国くにの青垣山あをがきやまの内うちに、下したつ石根いはねに宮柱太知みやばしらふとしり立たて、高天原たかまのはらに千木高知ちぎたかしります

伊射那伎いざなきの日真名子ひまなこ、かぶろき熊野大神櫛御気野命くまののおほかみくしみけぬのみこと、国作りくにつくり坐ししましし大穴持命おほなもちのみこと二柱ふたはしらの神かみを始めてはじめて

百八十六社ももやそまりむやしろに坐すます皇神等すめがみたちを、某なにがしが弱肩よわがたに太襷ふとだすき取りとり掛けてかけて、伊都幣いつぬさの緒を結びむすび、天あめの美賀秘みかび冠りてかがふりて

伊豆いづの真屋まやに麁草あらくさを伊豆いづの席むしろと苅りかり敷きてしきて、いつへ黒益しくろまし、天あめの甕和みかわに斎みいみ籠りてこもりて

志都宮しづみやに斎いはひ鎮しづめ仕つかへ奉まつりて

朝日あさひの豊栄登とよさかのぼりに斎いはひの返事かへりごとの神賀かむほぎの吉詞申よごとまをし賜たまはくと申まをす

高天たかまの神王高御魂命かむみおやたかみむすびのみことが皇御孫命すめみまのみことに天あめの下大八嶋国したおほやしまぐにを事寄ことよさし奉まつりし時ときに、出雲いづもの臣等おみらが遠とほつ神天穂比命かみあめのほひのみことを国体見くにがたみに遣つかはしし時ときに

天あめの八重雲やへぐもを押おし別わけて天翔あまがけり国翔くにがけりて天あめの下したを見廻みめぐりて返事申かへりごとまをし給たまはく

豊葦原とよあしはらの水穂国みづほのくには昼ひるは五月蝿さばへなす水沸みなわき、夜よるは火瓮ほべなす光かがやく神在かみあり、磐根いはね・木立こだち・青水沫あをみなわも事問こととひて荒あらぶる国くになり

然しかれども鎮しづめ平むけて皇御孫命すめみまのみことに安国やすくにと平たいらけく知しろし坐めさしめむと申まをして

己命おのれみことの児天みこあめの夷鳥命ひなとりのみことに布都怒志命ふつぬしのみことを副そへて天降あまくだし遣つかはして、荒あらぶる神等かみどもを撥はらひ平むけ、国作くにつくらしし大神おほかみをも媚こび鎮しづめて、大八嶋国おほやしまぐにの現あきつ事こと・顕うつし事事寄ごとことよさしめき

大穴持命おほなもちのみことの申まをし給たまはく、皇御孫命すめみまのみことの鎮しづまり坐まさむ大倭おほやまとの国くにと申まをして

己命おのれみことの和魂にぎみたまを八咫やたの鏡かがみに取りとり託けてつけて、倭大物主櫛甕玉命やまとのおほものぬしくしみかたまのみことと名なを称へてたたへて大御和おほみわの神奈備かむなびに坐せませ

阿遅須伎高孫根命あぢすきたかひこねのみことの御魂みたまを葛木かづらきの鴨かもの神奈備かむなびに坐ませ、事代主命ことしろぬしのみことの御魂みたまを宇奈提うなてに坐ませ、賀夜奈流美命かやなるみのみことの御魂みたまを飛鳥あすかの神奈備かむなびに坐ませて

皇御孫命すめみまのみことの近きちかき守神まもりがみと貢りたてまつり置きておきて、八百丹杵築宮やほにきづきのみやに鎮まりしづまり坐しきますき

皇親神漏伎すめらがむつかむろぎ・神漏美かむろみの命みことの宣のり給たまはく、汝天穂比命いましあめのほひのみことは天皇命すめらみことの手長たながの大御世おほみよを堅磐かきはに常磐ときはに斎いはひ奉まつり、茂いかしの御世みよに幸さきはへ奉まつれと仰おほせ給たまひし次つぎての随まにまに

斎いはひ仕つかへ奉まつりて、朝日あさひの豊栄登とよさかのぼりに、神かみの礼白ゐやじろ・臣おみの礼白ゐやじろと御禱みほぎの神宝献かむだからたてまつらくと申まをす

白玉しらたまの大御白髪坐おほみしらがまし、赤玉あかたまの御赤みあからび坐まし、青玉あをたまの水みづの江えの玉たまの行ゆき合あひに

明御神あきつみかみと大八嶋国知おほやしまぐにしろし食めすす天皇命めらみことの手長たながの大御世おほみよを御横刀広みはかしひろらに打うち堅かため

白御馬しろみまの前足まへあしの爪つめ・後足しりへあしの爪踏つめふみ立たつる事ことは、大宮おほみやの内外うちとの御門みかどの柱はしらを上うはつ石根いはねに踏ふみ堅かため、下したつ石根いはねに踏ふみ凝こごらし

振り立つるふりたつる耳みみの弥高いやたかに天あめの下したを知ろし食さむしろしめさむ事ことの志しるしのため

白鵠しらとりの生御調いきみつきの玩物もてあそびものと、倭文しづの大御心おほみこころもたしに

彼方かなたの古川岸ふるかはぎし、此方こなたの古川岸ふるかはぎしに生ひ立つおひたつ若水沼間わかみぬまの、弥若叡いやわかえに御若叡みわかえ坐しまし

すすぎ振るふる遠止美をとみの水みづの、弥乎ちいやをちに御袁ちみをち坐しまし

麻蘇比まそひの大御鏡おほみかがみの面おもを、おしはるかして見行はすみそなはす事ことの如くごとく

明御神あきつみかみの大八嶋おほやしまを天地月日あめつちつきひと共ともに安やすらけく平たいらけく知しろし食めさむ事ことの志しるしのためと、御禱みほぎの神宝かむだからを捧ささげ持もちて

神かみの礼白ゐやじろ・臣おみの礼白ゐやじろと恐かしこみ恐かしこみも天あまつ次つぎての神賀かむほぎの吉詞申よごとまをし賜たまはくと申まをす

現代語訳出雲の神々の奉斎

意訳を含みます

多くおおくの日ひの中なかでも生命せいめいに満ちたみちた今日きょう、出雲国造いずものくにのみやつこが畏れおそれ慎んでつつしんで申し上げますもうしあげます。現御神あきつみかみとして国くにを治めるおさめる天皇てんのうの御代みよが長くながく続くつづくよう、出雲いずもの熊野大神櫛御気野命くまののおおかみくしみけぬのみことと大穴持命おおなもちのみことをはじめ、百八十六社ひゃくはちじゅうろくしゃの神々かみがみを斎いいわい鎮めてしずめて奉仕ほうしし、その復命ふくめいとして神賀かむほぎの寿詞よごとを奏上そうじょうします。

注記

原文には国造名と奉仕者名を入れる箇所があります。「百八十六社」は本文の数を保持しています。

冒頭

出雲の神々の奉斎1 / 5

出雲国造神賀詞

前回の続きがあります

前回読んでいたところから再開しますか?

出雲国造神賀詞

出雲国造神賀詞について

概要

出雲国造が出雲の神々を奉斎したことを述べ、神宝を奉り、天皇の御代の長久と守護を言祝ぐ長大な古代の神賀詞です。

構成
5節
本文量
1107字
注記
3件

この祝詞で願うこと

  • 出雲の神々の奉斎を奉告すること
  • 神宝を奉ること
  • 天皇の御代の長久と守護を言祝ぐこと

神々・対象

天穂比命
出雲の奉斎と復命を担う祖神として語られる神
大穴持命ほか出雲の神々
国平らげと守護神の配置に関わる神々
天皇
御代の長久と守護を言祝がれる対象

由来と位置づけ

『延喜式』巻八に伝わる出雲国造神賀詞です。天穂比命の復命、国平らげ、和魂と守護神の配置、神宝、御代の寿ぎを一続きに語ります。

本文の流れ

全5節で、「出雲の神々の奉斎」から「天皇の御代を寿ぐ神宝」までをたどります。

読む前に知っておきたいこと

  • 六節で出雲の奉斎から国平らげ、神宝、御代の寿ぎ、忌部への結びまで進みます。

  • 神名と鎮座地の比定には複数説があります。

  • 玉・横刀・白馬の比喩は若返り・堅固さ・守護を重ねて表します。

出雲国造神賀詞

目次

出雲国造神賀詞

表示設定

組方向
読みの補助
言語English
文字サイズ
100%
配色
読む速さ

出雲国造神賀詞

訳文・訂正を送る

より自然な現代語訳の提案や、本文・読みの誤りがあればお知らせください。内容を確認してから反映します。