新宅へ神々を招く
掛巻も畏き屋船豊受比売大神・手置帆負命・彦狭知命、此の地に領り坐す産土大神を
是の奥床に招き奉り坐せ奉りて、畏み畏みも白さく
完成の奉告と供え
大神等の大前に告げ奉らく、天津御量を以て事始め給ひし随に
大峡・小峡に生ひ立てる大木・小木を伐り取り持ち来て、是の新室を築き営み造り竟へ
今日の生日の足日に、笑み取る幣帛、明妙・照妙・和妙・荒妙、御酒・御饌、海・川・野・山の味物を
案代に置き足らはして仕へ奉らくを、平らけく安らけく聞こし食して
住まいと子孫の安泰
突き立つる柱の傾く事なく、桁の動き鳴る事なく、取り葺く萱の隙く事なく
桁・梁・戸・窓の錯ひ動き鳴る事なく、夜女のいすすき厳つしき事なく
大風・洪水の禍事なく、地震・香具土の災害なく、子孫の八十続弥向栄に立ち栄え
夜の守り日の守りに護り恵み幸へ給へと畏み畏みも白す
現代語訳新宅へ神々を招く
意訳を含みます
家屋を守る神々、工匠の神々、そしてこの土地の産土大神を新しい家の奥床へお招きし、謹んで申し上げます。
注記
「奥床」は家の内に設けた神聖な場として受けました。神棚の形式や現在の祭場を一律に定める説明ではありません。
意訳を含みます
神々の御計らいのもと、山に育った大小の木を伐り出して新しい家を造り終えました。今日のよき日に、幣帛や織物、御酒、御饌、海・川・野・山の品々を祭の台に十分に供えることを、穏やかにお聞き届けください。
注記
「大峡・小峡」は山の大小の谷あい、「案代」は供物を置く祭具・台として広く訳しました。「笑み取る幣帛」は原画像の総ルビに従い、祝いの供物としてまとめています。
意訳を含みます
柱や桁、梁、戸、窓、萱葺きの屋根に緩みや騒がしい物音がなく、風水害、地震、火の災いにも損なわれず、子孫が代々栄えるよう、夜も昼も守り恵んでくださいと申し上げます。
注記
「夜女のいすすき厳つしき」は『延喜式』大殿祭にも見える難解な古語です。個々の語義を断定せず、住居内の不穏な物音や乱れがない祈りとしてまとめました。
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